▼「知は“いのち”なり」〜「情報の価値」が「いのちを守る」時代
『知の逆転』をはじめ一流の叡智を手軽な価格で手渡してくれるNHK出版新書。
そのNHK出版新書で不思議な魅力をもつ本に出会いました。
『いのちを守る 気象情報』斉田季実治、NHK出版新書
この本に、なんで不思議な魅力を感じたのだろう?
そのボンヤリとしていた気持ちが確信に変わったのは、
「私は熱中症になった唯一の気象キャスターかもしれません」
この一文からはじまる124Pから134Pの10Pを読んでいる最中でした。
「あれは熱中症だったんだ・・・」
私は心の中でそうつぶやいていました。
この10Pを読んでいるうちに、中学時代の陸上部での夏の練習のときに起きた身体の異変から
昨年の夏家族に起きたできごとまで、「そうか、あれは熱中症だったんだ・・・」と
思い当たるシーンが次から次へと脳裏に浮かんできたのでした。
その次の瞬間、背筋がゾッとする思いがしました。
目からウロコが落ちるという本はありますが、
背筋がゾッと凍るような体感をする本に巡りあうことはあまりありません。
天気予報でよく耳にする「熱中症に気をつけてください」という「気象情報」。
このひと言の情報がもつ重み。その「情報の価値」が、私の中でガラリと変わった瞬間でした。
読み終えたあと、
「知は“いのち”なり」
というひと言がふっと脳裏に浮かびました。
「知は“チカラ”なり」と言いますが、
知とは、知り得た情報を解釈し、必要な行動へと導くものです。
そして、情報⇒解釈⇒行動により、未然に防げるリスクを最小化し、
得られるメリットを最大にすることが知の役割です。
その意味で、私は気象情報を生かす知をもっていませんでした。
その知識の不足が、じつは重大なリスクをもたらしていたということも知らずに・・・。
この本は、たとえるなら『家庭の医学』の「気象版」。
『家庭の気象学』とでもいいましょうか。
「医学の知識」、「気象の知識」どちらも知識として押さえておくことで
「いのちを守る」ために必要な行動をとることができる実践知です。
ここでは、「熱中症」というひとつの情報にフォーカスしましたが、
・著者の「空」を見上げていた少年時代のエピソード
・気象情報にかける「冷めない情熱」
・なぜ「気象情報」が「いのちを守る」のか。その理由
など、読み応えのある一冊です。
ぜひ、ご一読ください。